「先輩?」
「ん…何」
波打ち際から100mほど離れた細い小道。
ざざあ…ざざあ…
波音と少し離れた明かりからの賑わいだけが聞こえてくる。
そんな静かな空間を、二人は歩いていた。
LeaVe A NesT
「…なに?」
声を掛けておいて黙り込んだのだめに、もう一度返事をする。
「さっきね、きらきら星弾いたんデス」
「…?ああ…、あのうるさいガキ達と?」
うるさくないですよ、とのだめはくすくす笑う。
「かわいかったなあ。のだめの演奏聴いて、ピアノが好きになったって言ってた」
和やかな顔で少し俯く。
そのまま沈黙が続くが、千秋は何も言わないままのだめに先を促す。
まだパーティーは続いているのだろうか、会場からまた軽快な音楽が聞こえ始めた。
少し歩いて、のだめは口を開いた。
「拍手もらって…嬉しかったデス。…これから、もっともっと沢山の人に聴いてもらいたい」
その言葉は、のだめの素直な気持ちと、小さな決意に満ちていた。
おちゃらけていない、少しはにかんだような口調が、なによりもそれを証明していた。
「…ふうん」
彼はそう呟いた。
前を歩く千秋は、続きを言う代わりに、少しだけ後ろを振り向き、そしてぶっきらぼうに彼女の手を自分のそれに収めた。
その手を握り返しながら、いつもより積極的なその行動に、のだめは首を傾げる。
「もしかして先輩、ちょっと寂しかった?」
ニヤニヤしながら、のだめは言う。
「…なんで」
「大切に育てたヒナが巣立っちゃいそうで」
そういうと、のだめはプッと噴き出す。
「う、うぬぼれんな!誰がお前なんか…」
「あー、先輩、ちょっと図星ー!?」
のだめは千秋の顔を覗き込もうとしながら、嬉々として騒ぎ立てる。
「うるせー!」
少し赤い顔で振り返った千秋は、立ち止まり、のだめの顔を自分の胸へと押し付ける。
「~~っ!」
黙らせてやるつもりだったが、同時に息も出来なくなってしまったのだめがもがき苦しむと、千秋はその力を緩めた。
やっと少し下を向いて、呼吸が出来るようになったのだめは、ぜえぜえと呼吸を整える。
そしてそのままの体勢で、でも、と言葉を繋いだ。
「のだめ、少しは先輩に近づけましたよね?」
のだめはそのまま千秋の腰へと手を回す。
「調子にのるな」
言葉とは裏腹に、のだめを抱きしめる千秋の腕は
とても、優しかった。
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ずっと書いてなかったから、全然書けないです…(吐血
これだけ書くのにすごい時間がかかってるYO!しかもオチなし!
卒業式の最中ずっと考えてました。
設定は、のだめ初リサイタル後、二人でパーティーを抜け出してお散歩。
少しずつリハビリしていこうかと思ってますm(_ _)m