響想曲



2005年 03月 28日 ( 1 )


お題SS<5科目の課題> 4.音楽

それはパリに花が溢れる季節。



人はツバサを持つと、自由になれるんですか?



のだめがいつの間にか寄生しきった千秋の部屋は今ではダンボールに溢れて。
彼女はリビングにあるピアノの長椅子に腰かけ、彼の方を向き足をぶらぶらさせる。
「懐かしいですねー。あのとき結局先輩遅刻したんデスよね」
のだめが少し目を細め、ころころと笑いながら言う。
「あれはお前のせいだろーが!」
「あー、責任転嫁!」
千秋が一睨みすると、のだめは子供のように彼を指さした。
すると、飛んできた煙草の箱がのだめのおでこにクリティカルヒットする。
彼の卑怯なほどのコントロールの良さは、恐らく大方の草野球選手のそれを上回るであろう。狙いはのだめと限られているが。
奇声を上げて抗議するのだめを無視して、千秋は机の上に広げた総譜に目を落とす。

普段ならそれで良かった。それが勉強開始の合図。邪魔するなのボディランゲージ。
しかし今日は全く頭に入らない。
集中しようと何度も同じ所ばかりを目で追うが、やはり無理で。
深く息を吐く。いつもならこれで落ち着けるのだが、今日はそれさえも効果がなかった。
集中できない理由は分かっている。

千秋は勉強を継続する事を潔く諦めて立ち上がった。
彼に構ってもらえず、何やら訳の分からない曲を弾き始めていたのだめの隣に座る。
のだめはそれに気付きはしたもの、特に何もして来ないのでそのままピアノを弾き続けた。
しかし千秋が彼女の腰を抱くと、その動きが止まる。
「せ…先輩?」
いつもより少し赤い顔で振り向く。
「…ん?」
のだめにもたれかかった身体を首だけ起こして、千秋は目を合わせた。
「い、いえ…」
まるで甘えてくるような、初めて見た千秋のその態度に、のだめは頬がどんどん熱くなるのを感じながら目を逸らす。
のだめがピアノに向き直ると、再び肩辺りに千秋の頭の重量が掛かってきた。
何か弾こうとのだめの手は鍵盤を叩く素振りを見せるが、あいにく頭の中に何の譜面も浮かばない。
のだめは彼に気付かれない程度に深呼吸をした。もしくはもう既に彼女の緊張は気付かれているのかもしれないけれど。

「…先輩!」
すぐ隣にいる千秋に、のだめは一際大きな声で呼びかけた。
これがケジメだと、言う風に。
「あの…明日は…、…あの、何時に出るんデスか?」
「…7時」
「そう…ですか」
千秋は淡々と答えた。しかしのだめはそうはいかないようだ。
だんだん声が萎んでいくのが本人もわかっているようで、無理に笑おうとして、顔が歪む。

明日この地を去る彼を、笑顔で送り出したかったのに。

「そうだ!のだめ、お見送りの曲を弾きますね!」
無理して気分を盛り上げているのはバレバレで。から元気も甚だしいのはわかっている。
だけどそうしなくてはいられないというように、のだめは声を張り上げた。
ショパンの別れの曲。
ゆっくりと、のだめの紡ぎ出す音楽が流れ始める。

突然、千秋がピアノを弾くのだめの腕を掴んだ。
驚いて振り向いたのだめと、半ば無意識で見つめあった。
長い沈黙、先に動いたのは千秋だった。
「……悪い」
ため息のように息を吐いて、千秋は椅子から立ち上がった。
先程の煙草を拾い上げ、全開にした窓際でその1本にライターで火をつける。
一瞬だけ、煙のにおいが漂った。

しばらくすると、再びピアノの音色が聞こえてきた。
さっきの続きではない。
ラフマニノフ2番。
希望と、決意の曲。

「…のだめ、まだ先輩とコンチェルトやること諦めてませんよ?」
ピアノの音に掻き消されそうな声が僅かに聞こえる。
「…知ってる」
すっかり暖かくなった春の風がピアノの音色に乗って、二人の過ごした部屋へと流れ込んできた。



――『どこにいようとも、音楽で繋がってる』いい言葉ですねー。あ!じゃあ、先輩とのだめも音楽で繋がってますね!
――繋がってるというより、捕まってる…
――大丈夫デス!のだめと千秋先輩は赤い糸でも結ばれてるんで、二重に繋がってるから離れたくたって離れられませんよ!
――お前、俺の話聞いてないだろ



旅立つ空に  出会いと別れ
青春の日々  全てを描き
いつか互いに  大きな花を
綺麗な花を  咲かせまた共に笑おう




数年後。
それは日本に桜が舞う季節。
「千秋せんぱーい!」
声に気付いて振り向くと、めいいっぱい背伸びをして両手を振るのだめが視界に入ってきた。
「峰くんたち、待ってますヨー!」
言いながら駆けてくる。いくつになっても、その幼い言動は全く変わらない。
息を切らしながらたどり着くや否や、千秋の腕を取って引っ張っていく。
「ほらほらー。先輩の大好きなお酒も待ってマスよー」
周囲は一面桜色と水色のビニールシートで埋め尽くされ、日本に戻って来たばかりの彼はその喧騒に多少うんざりする。
千秋は、引っ張られている方と逆の手でのだめの手を引き離し、そのまま繋いだ。
のだめとは逆方向に引っ張る。
「峰に少し遅れるって伝えろ」
「…へ?」
間抜けな彼女の顔を見て、千秋はつい微笑む。
そしてあらぬ方向を向いて、妙に神妙な顔でぽつりと呟いた。
「おにぎり、食いたいかも」
今度は合点がいったのだめが笑う番だった。
「相変わらず、素直じゃないですねー」
繋いだ手を離し、その腕にしがみついた。

「おかえりなさい!千秋先輩」
「……ただいま」



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音楽関係ないやん。
しかも長すぎ。タイトル関係なさすぎ(最悪
ゆ、許してください…!なんか、別れネタ書きたかったんです…!(しかも結局最後は再会だし
そのために切な系って宣言してたんですから…!
あと、最初に言ってたこのお題のイメージソング、おわかりの通りアンダーグラフの「ツバサ」です。
デビュー時から大好きで、このお題のネタを考え付いた頃はまだそこまでランキングも良くなかったはずなんですが、今では超ロングヒット作!嬉しいような、寂しいような…。
この歌は、歌詞が本当良いです!チアノダ!切な系チアノダにピッタリ!良ーい!!
でも、メロディーも良いです。。1週間ぶりに聴いたら、聴き飽きていたはずなのに未だに泣けたよ…。
あわわ、なんだか語っちゃいましたね。とにかく、まだ未聴の人がいるなら絶対聴く価値有りですよvv
えー。最後のお題は皆さんお待ちの(一番待っていたのは私かもしれない/微笑)保健です。保健
…頑張ります。
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by touch_me_not | 2005-03-28 22:05 | のだめお題SS

宮崎楓(みやざきかえで)による、のだめカンタービレを主に駄文を書き連ねる日記サイト。SSも書きます。コメント大歓迎!
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