響想曲



お題SS<5科目の課題> 3.体育

走っても走っても。
どうにもならないような気がして。
文句をたれると、誰のせいだと怒鳴られた。




RUN!RUN!RUN!




「っていうか、なんでお前まで付いてきてるんだよ!」
前を走る千秋が、後ろを振り返りながら叫ぶ。
「つ…妻の役目デ、ス…!」
「ふざけるなー!!」
「ほ、ら…先輩…、前…!危ない!」
自転車がすぐ側を掠めていく。
寸前で避けた千秋は、今度は前方をちゃんと確認して、腕時計を覗き込む。
「…あと5分…!」
「ぎゃぼ!ま…間に合う…つもりです、か!?」
「走り続ければギリギリで間に合うだろ!」
「は…!走り続けるんですかー!?」
                  
――只今7時55分。




事の発端は今日の早朝。
五月蠅いチャイム音に少々イラつきながらも千秋が玄関のドアを開けると、目の前にあったのは青ざめたのだめの顔。
「せ、先輩…。スミマセン…」
「……は?」
しかし、どれだけ記憶を辿ってみても謝ってもらう心当たりは、ない。
――何をしでかしたんだ…。
千秋はこめかみを押さえ、うんざりとした表情でのだめに続きを促す。
「実は…」
のだめは言い掛けて、無意識に目を逸らす。
「峰くんから、今日のR☆Sオケの練習は午前8時からに変更になったっていう伝言あずかってて…」
「はあ!?お前…っ、それ…」
「す、すみませーん…!」
「遅いんだよ!今何時だと思ってるんだ!」
殴られるとでも思ったのだろう、のだめは両目を瞑って手を頭上でかざし、一歩後ずさった。
しかし今はそんな時間もない。
千秋は慌てて支度を始めた。
             
――時刻は既に7時20分。




タクシーに飛び乗ったところまでは良かった。大丈夫、間に合う。
――が、しかし。
「すいませんねぇ、お客さん。今日、今話題のペさんが来日するんで混んでるんですよねぇ」
タクシーは1ミリたりとも動かない。そう、渋滞で。
今日は厄日か!そう叫びたくなるのをこらえて、千秋は運賃を精算してタクシーを降りた。
同時に、これ以上自分の気分を害したくないので、のだめが隣に立っていることは無視しようと決意した。
                 
――7時50分。




走り出して5分で、決意破れる。
「せ、せんぱーい…、ま…まだ走るんで、すか…」
「誰のせいだー!!」



そして今に至る。至っているのだ。
のだめの息はさっきからあがりっぱなしで、だったら止まればいいのにと思うが、それでも必死で付いて来る。加えて、何故か会話も途切れない。壮絶な体力である。
「あ…あと、どのくらい…です、かー…?」
しかし、だんだんのだめの目線が下がってきた。心もち、さっきより足音も重い。
必要以上に大きなバッグを掛け直したのだめは、そのとき自分の足元に軽い遮りを感じた。
道路の凹凸に引っかかり前につんのめったのだ。
コケる!そう思い、無意識に手をクロスして顔を庇う。
しかし想像していた痛みは全く襲ってこない。
瞼を開けると、足を止めた千秋が片腕で体勢の崩れたのだめを支えていた。
のだめがバランスを取り戻すと、千秋は気をつけろと言って再び走り出した。
なんとも意外な千秋の行動に、のだめは追いかけながら目をぱちくりさせて彼を見る。またコケることの無いように、足元には充分注意を払いながら。
それに気付いた千秋は、のだめの頬を向こうへ押しやる。
前を向いて走れ。無言でそう言う。
ぶう、と口に出して膨れて見せたのだめはわざと逆側を向いた。
幼稚な、幼稚な仕返し。仕返しにもなっていない仕返しで。
彼の顔を見なくても、のだめには千秋の呆れた表情をたやすく想像できた。
千秋はのだめといる時、よくそんな表情をしてるから。

自分のためだけに手間を掛けてもらってる気に、なるから。


ふいに、のだめの肩にかかっていた重量が無くなった。
「うわ、お前…何入れてんだよ」
「あ…、愛妻、弁当デ、ス…」
その荷物をあっさりと抱えた千秋は、バッグの中を覗き込む。
いくつおにぎりが入っているのか千秋は想像したくもなかったが、その大きさと重量から、とりあえず優に配って回れるほどあるのは確かだった。

千秋は、ふと思い出して再び腕時計を確認する。
そして前を見据える。目的地は目前だ。
「あー、もういいから喋るな!ほら、走れ!」
「ま…待ってく、だサイ…よお…!」



千秋とのだめの突発企画マラソン大会は、ようやく終わりを迎えた。
息も絶え絶えに、正面玄関を抜ける。



時刻は8時01分。

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お、お待たせしてスミマセン…。お題、やっと3つ目です。
コレはですねー、実は2を書く前に書いてたんで、今見ると書き直したい所だらけなんですが…見なかった事にします(ニコ!
とにかくスピード感溢れさせたかったんですが…なんでこの人達走ってるんですか?(聞くな
あ、前言ってた千秋と松田様のからみ(違)、リレー小説の方でそれとなく書いたんで、お暇な方は柚紀さんの所に覗きに行ってみて下さい(もう少ししたら更新されるそうです)。
えとー、今度ちゃんと近況報告とかしたいと思います。見てくださる方々のため全てにおいて自己満足ですが、何か?(微笑
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by touch_me_not | 2005-03-03 22:48 | のだめお題SS
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